水蜜


池に脚を浸す2人の頭上
翠蓋が風に煽られる
花びらが浮かんだ水面に
不思議な明暗を描き出す
木漏れ日のまだらな光
 匂いがする
 薔薇じゃない
 もっと甘いの
少女たちの囁きに乗って
初夏のきらめきと倦怠が
リボンのしなやかさで絡みつく
それは一瞬の清涼を与え
名残惜しそうに離れて
瑞々しさの香りは
喉の奥 少女の中で震えたまま
やがて2人は手を取り合い
花びらがこびり付いた脚で
草いきれを踏み締める
そして見つけたものは
甘い蜜を湛えた水の果実
青白く細い指が
しっとりと冷たいそれに触れ
和毛の表皮は僅かに沈む
やがて水蜜は少女たちの
細い喉を滑り落ちる


2007/1/21



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