りんごの木


群青の夜に僕は芽吹く
月の光に晒されて
深い白を闇色に染める
正しく光を食むことさえ
崩れゆく意識のなか
苛辣なものと化す

僕を抱き締めて
手を握っていて
早く君の側に
植えておいてよ
心臓のとなり 酸素の供給
一人歩きをしないうちに
丁寧に根付かせて

堕ちた天蓋
洪水のようなステラ・ミラ
密やかな墓標に
君の名を刻む
僕は君を葬った
君は僕を葬った?
歳を重ね 今年もまた
真紅の果実が疼き始め
憂いを熟れさせる
いつが始まりで いつが終わりなのか
分からないまま 僕は
実に口付け牙を立て続ける
咎の種をも嚥下する


2007/7/21



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