さかしまメルヒェン



わたしがアリスだったなら
毒かもしれない薬は飲まない
ダイナが隣にいないから
黒いマントを被っちゃう
金の髪もエプロンドレスも小さな靴も隠してね
白うさぎのしっぽを追うよりも
うさぎ穴を見上げて泣くわ
“挿し色がないとつまらないじゃない”

わたしがいばら姫だったなら
王子さまのキスでは目覚めない
うつらうつら 殻の中はいい気持ち
100年眠ってもまだ目覚めの支度ができないの
いばらの棘で誰かの血が流れたって
知ったこっちゃないわ
いつか駒鳥たちが優しくつついてくれるまで
“どうか邪魔をしないでね”

わたしが白雪姫だったなら
ママに鉄の靴なんて履かせない
真逆の国で罪をお供につけて
ゆっくり年を重ねていけばよろしいわ
その方がずっと魅力的だと思いませんこと
腐ったりんごは誰も食べたがらないのでしょう
時の流れは残酷なものなのです
“自ら死ぬのは許しません”

わたしが人魚姫だったなら
海の泡にはならない
鋭い短剣を持つのならば
胸にしまって街へゆくわ
愛するものをたくさん見つけたいの
誰かさんより素敵なものが
陸の上にはまだ隠れているかもしれないでしょ
“お魚を食べてみようかな”



2010/10/31



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