ひむし町籠鳥


ごらん あの子は売られてく
真っ赤なべべを着せられて
目隠しされて手を引かれ
うわばみ谷ぬけ
からくり街道つっきって
よもつひらさか登りきる

ごらん あの子は花のかんばせ
めくらなあの子にゃさも哀れ
百鬼出ずる格子窓
引く手数多のほの青き
玻璃の目のぞき込みたくて
兄の指先遠ざかる
優しきかなたの海の底
きっと眠っていらっしゃる

寝ても覚めても墨色の
あの子の春は遠すぎて
地獄の鳥が鳴くたびに
ああ 兄よ
迎えが来ぬのを地獄とは
腹の奥底天鵝絨の
紅き小箱に隠しつつ


2008/10/09



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